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英国エリザベス朝及びジェコビアン朝における政治、社会、経済、宗教、文化の発展がウィリアム・シェイクスピアの戯曲に与えたインパクトの概略(その1)

1. はじめに

ウィリアム・シェイクスピアはおそらくほとんどの人が世界一の劇作家として認めるところであろう。彼の戯曲は世界各国の言葉に翻訳され、研究者から演劇関係者を中心に、学生から大人まで読む人もさまざまである。しかし、今ではかなりの人が知っている「生きるべきか、死ぬべきか」という「ハムレット」のモノローグも、実は初等教育(グラマー・スクール)しか受けていない同作家が演劇という大衆文化の機能をフルに利用してこの世に送り出したものである。

ごく平均的な教育しか受けていない者が、当時の言葉の持つリズムとサウンドとボキャブラリーの美しいハーモニーを理解し、尊敬語や謙譲語あるいは俗語といった言語の階層を使いこなし、ギリシャやローマの歴史はもとより、当時の世界観や文化・慣習をふんだんに盛り込んだ芸術的傑作を本当に一人で書くことができたのかという論議もないことはない。しかしながら、シェイクスピア作の「ロミオとジュリエット」や「テンペスト」などの戯曲は舞台のパフォーマンスを通して、今も変わらず観る者の大多数を魅了しているのは紛れもない事実である。

グラマー・スクール在学中のシェイクスピアは周囲の世界にいつも興味深々で、当時自ら経験したエピソードをはじめ、結婚や祝い事に見られるイギリス独特の慣習と人々の間にある一風変わった常識、お祭りや人気のあった娯楽などを後年書くことになる戯曲中のシーンにしばしば応用している。たとえば、「じゃじゃ馬慣らし」に見られる結婚の形態や「テンペスト」の中のマスク(仮面劇)などがそれである。現代はお茶の間にいながらにして、テレビ、ラジオ、インターネットを通し、だいたいではあるが簡単に世の中の動きを感じることができる。しかし、シェイクスピアの生きていた約400年前のイギリスでは、何が流行っていて、誰がプレーヤーで、庶民は何を待っているのかを正確に把握するのはそれほど容易ではなかったはずだ。にもかかわらず、当時の動きを盛り込んだ多くの人たちが共感できる作品を書くことができたということは、常にシェイクスピアが周りにいた大人たちの話に耳を傾けていたはずに他ならない。彼の作品中で最も使用されているエピソードの中に、王様や貴族に関するものが多いのは、幼少時代から常に周囲の動きに敏感であったことの証拠である。

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