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英国エリザベス朝及びジェコビアン朝における政治、社会、経済、宗教、文化の発展がウィリアム・シェイクスピアの戯曲に与えたインパクトの概略(その4)

4. 自然の良さを戯曲にこめたシェイクスピア

祖父が大農家という家に生まれたシェイクスピアは、子供時代に過ごした農村ならではの自然あふれる環境から強い影響を受け、自然の世界、四季の移り変わり、動植物の性質や言い伝えなどの要素をしばしば戯曲に盛り込んだ。たとえば、「ハムレット」の第五幕で父の死を知らされ、その最愛の父がよりによって恋人のハムレットの手にかかって殺されたことを知ったオフィーリアは強い悲しみで気が狂ってしまうシーンがある。狂ったオフィーリアが花言葉をうつろにつぶやきながら、居合わせた人たちに花を配るシーンでは、花は非常に効果的なシンボルとして使われ、作品の登場人物に人格的な深遠さを与えている。なぜならば、オフィーリアが手渡していく花そのものが登場人物の性格を見事にとらえ、あたかもすべての問題をお見通しであるかのように、当事者に花言葉を投げかけているからである。その後、オフィーリアは自殺をするのであるが、彼女の死を報告するガートルード女王の台詞中にも、美しい死に様を描写する上で、花は効果的なシンボルとして使われている。

鳥などを始めとした動物の獣性もシェイクスピアの戯曲中でよく取り上げられている。たとえば、ひばりは昼間訪れる平和なメッセンジャー役である一方で、ナイチンゲールは夜美しい声で歌う女性の役を表現する。不気味な情景や死の世界を連想させるふくろう、残酷と卑しさの象徴であるトビ、人をだまして金品を奪うとされるカラス、高貴、誇りなどの象徴であるはやぶさなどは悲劇「マクベス」にみられる権力争いの中で頻繁に登場する。鳥獣のシンボリズムは悲劇だけでなく、喜劇の「真夏の夜の夢」などにも使われているのであるが、シェイクスピアは田舎の動物だけにとどまらず、外国のサイや想像上の動物ユニコーンなども登場させている。

エリザベス朝の世界では、王家・名門の紋章に使われるライオンやワシはそれぞれのグループにおいて上層に位置する一方で、とんまの象徴のロバ、不浄と大食いを連想させるブタ、好色・淫乱の象徴のヤギ、卑劣・不潔さを連想させるネズミ、意地悪と貪欲の象徴のサルは下層に位置する。シェイクスピアの作品中、女性がしばしばヘビに例えられるのはヘビの獣性である冷血と表面のしっとりさからである。

以上のことをふまえると、シェイクスピアは登場人物たちの毎日の生活に動物のさまざまな獣性をとりいれることで、生き生きとした人物像を作り、登場人物に動植物のシンボルや言い伝えなどを組み合わせることにより登場人物の人格に深みを与えている。これらのことは、自然がいっぱいの田舎で幼少期を過ごしたシェイクスピアだからこそできたのではないかと言えるだろう。

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